日本腎臓病協会が主導する慢性腎臓病(CKD)に高トリグリセライド(TG)血症を合併した患者さんを対象とした医師主導の臨床研究を紹介しています。研究内容にご興味をお持ちの方は、ぜひ研究への参加についてお問い合わせください。
About Research
研究について
CKDと脂質異常症の
新たな治療選択肢を探る
我が国では1,330万人が慢性腎臓病(CKD)の定義に合致し、成人の8人に1人がCKDに該当するとされています1)。CKDの治療の目標は、末期腎不全および心血管疾患(CVD)の発症・進展抑制にあり、その管理のために、生活習慣、血圧、尿蛋白、糖尿病、貧血、脂質異常症等の治療が求められています。
CKD合併高TG血症治療の
新たなエビデンス創出へ
慢性腎臓病(CKD)は、進行すると腎不全や心血管疾患(CVD)のリスクが高まる深刻な病態です。特に、脂質異常症を伴うCKDの患者さんにおいては、治療法の選択が病状の進行や患者さんの生活の質に大きな影響を与えるため、適切な治療戦略が求められます。本研究では、軽度から高度の腎機能障害を有するCKD合併高トリグリセライド(TG)血症の患者さんに対するペマフィブラートの腎機能への影響を検証し、脂質代謝と腎機能の変化の関連性を探索的に検討することで、新たな治療エビデンスを創出することを目指します。
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慢性腎臓病
Chronic Kidney Disease:CKD
慢性腎臓病(CKD)は、腎機能の低下が3カ月以上持続する状態を指します。推算糸球体濾過量(eGFR)が60min/分/1.73㎡未満であるか、尿に異常(例えば蛋白尿)がある場合に診断されます。主な原因としては、糖尿病、高血圧、慢性糸球体腎炎が挙げられます。初期段階では症状がほとんどなく、気づきにくいですが、進行すると疲労感、むくみ、尿の異常(量や色の変化)等が現れます。
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CKD合併脂質異常症
日本腎臓学会の2023年ガイドライン2)では、CKDの患者さんの脂質異常症に対するスタチンやスタチン+エゼチミブの併用がCVDイベントと腎機能悪化を抑制する可能性があり推奨されています。一方、脂質異常症治療薬のフィブラート系薬は腎障害リスクがあるため推奨されていません。日本動脈硬化学会の2022年ガイドライン3)では、CKDの患者さんの高TG血症管理にn-3系多価不飽和脂肪酸や選択的PPARαモジュレーターの使用を考慮することが記載されています。
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ペマフィブラート
選択的PPARαモジュレーター(SPPARMα)
ペマフィブラート(パルモディアⓇ錠)は、選択的にペルオキシソーム増殖因子活性化受容体 α(PPARα)に結合し、標的となる遺伝子の発現を調節することで、血液中のTG濃度を低下させ、HDL-コレステロール濃度を上昇させます4)。従来のフィブラート系薬より腎機能への影響が少ない胆汁排泄型薬剤です。2022年に高度腎機能障害患者での使⽤が可能となりましたが、CKDの患者さんでのエビデンスはまだ十分ではありません。
CKD合併高TG血症の患者さんを対象に
ペマフィブラートの腎機能への影響を検証する
(多施設共同、非盲検、RCT)
本研究では、eGFR slopeを代替エンドポイントとして用いることにより腎イベントの発症リスクの観点から、ペマフィブラートの腎機能に与える影響を検証します。本研究においては安全性の観点から対照群との非劣性を検証後に、腎イベント抑制の観点から優越性を検証します。
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主要評価項目
Chronic eGFR Slope
12週(許容日±5週)から
104週(許容日±8週) -
重要副次評価項目
Total eGFR Slope
0週から104週(許容日±8週)
研究計画概要
- 試験デザイン
- 多施設共同、非盲検、ランダム化比較試験
- 研究対象者
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CKD合併高TG血症患者
(eGFR 20 mL/min/1.73 ㎡以上、60 mL/min/1.73 ㎡ 未満) - 治療群
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ペマフィブラート治療群
(ペマフィブラートを用いたガイドライン(GL)準拠の治療)
コントロール治療群
(フィブラート系薬を用いないGL準拠の治療) - 目標登録症例数
- 2,200名(各群1,100名)
- 研究期間
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〈予定登録期間〉
2024年5月20日から2026年6月30日
〈予定研究期間〉
2024年5月20日から2029年6月30日 - 試験の区分
- 特定臨床研究(臨床研究法該当)
- 資金提供機関
- 興和株式会社
研究デザイン
CKD合併高TG血症患者
同意取得日から8週間以内に投与を開始し、この間の検査データを0週データとして使用することができます。ただし、0週検査はペマフィブラート投与開始前に実施します。治療は、日本腎臓学会のCKD診療ガイドライン2023や日本動脈硬化学会の動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022に準拠し、ペマフィブラートを追加投与、または研究参加時の治療を継続します。
研究スケジュール
●:必須 〇:任意 v.1.3
Research Organization
研究組織
全国に広がる腎臓病対策
J-CKDIの連携
日本腎臓病協会の慢性腎臓病対策部会(J-CKDI)のネットワークを活用しつつ、研究に賛同してくださった先生方にご協力いただきながら研究を進めています。研究には幅広い機関の先生方が参加されています。ご興味をお持ちの方は、ぜひ研究への参加についてお問い合わせください。
- 研究主体機関
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特定非営利活動法人 日本腎臓病協会(JKA)
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所在地
東京都文京区本郷3-28-8 日内会館
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理事長柏原 直樹
柏原 直樹
川崎医科大学 高齢者医療センター 病院長 / 学長付特任教授
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- 研究代表医師
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- 田村 功一
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横浜市立大学医学部 循環器・腎臓・高血圧内科学 主任教授
附属市⺠総合医療センター病院⻑
特定非営利活動法人 日本腎臓病協会(JKA)理事
- 研究副代表医師
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- 矢野 裕一朗
- 順天堂大学医学部 総合診療科学講座 教授
- ステアリングコミッティ
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- 中川 直樹
- 旭川医科大学 内科学講座 循環器・腎臓内科学分野 准教授
- 西尾 妙織
- 北海道大学病院 内科Ⅱ 診療准教授
- 旭 浩一
- 岩手医科大学医学部 内科学講座 腎・高血圧内科分野 教授
- 山縣 邦弘
- 筑波大学医学医療系 臨床医学域 腎臓内科学 教授
- 福井 亮
- 東京慈恵会医科大学内科学講座 腎臓・高血圧内科 講師
- 南学 正臣
- 東京大学大学院医学系研究科 腎臓内科学 教授
- 岡田 浩一
- 埼玉医科大学 腎臓内科 教授
- 成田 一衛
- (公)新潟県スポーツ協会 新潟県健康づくり・スポーツ医科学センター センター長
- 丸山 彰一
- 名古屋大学大学院医学系研究科 腎臓内科学 教授
- 猪阪 善隆
- 大阪大学大学院医学系研究科 腎臓内科学 教授
- 鶴屋 和彦
- 奈良県立医科大学腎臓内科学 教授
- 和田 淳
- 岡山大学大学院医歯薬学総合研究科 腎・免疫・内分泌代謝内科学 教授
- 寺田 典生
- 高知大学医学部内分泌代謝・腎臓内科学講座 教授
- 向山 政志
- 社会保険大牟田天領病院 院長
- 今井 圓裕
- 中山寺いまいクリニック 院長
- 横田 直人
- 横田内科 院長
- 小林 一雄
- 内科クリニックこばやし 院長
- 参加医療機関
- 全国200施設以上の大学(専門)病院、一般病院、クリニック